酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS イーヴォ・ポゴレリチ ピアノ・リサイタル 12/10

<<   作成日時 : 2016/12/11 11:56   >>

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これが噂のポゴレリチか…。一度は実演に接したいと思い続けてきた、怪僧ポゴレリチ。ついに目の前に現れた。天才か、ゲテモノか。怖いもの見たさで蓋を開けてみると…うーむ、世評通り超個性的。良くも悪くも彼の世界に引きずりこまれた。しかし何より、疲れ果てた。

【前半】
・ショパン : バラード第2番 ヘ長調
・ショパン : スケルツォ第3番 嬰ハ短調
・シューマン : ウィーンの謝肉祭の道化
【後半】
・モーツァルト : 幻想曲 ハ短調
・ラフマニノフ : ピアノソナタ第2番 変ロ短調

ポゴレリチの音の引き出しの多さにはぶっ飛んだ。フォルテの強靭な打鍵は、さながら旧ソ連の重戦車の進撃だ。サントリーホールが瓦解しそうなほどだ。ピアノという楽器はこんな音まで出せるのか!一方、高音部のグリッサンドなど、ハケで頬をヒラヒラ弄ぶように軽やかで、その妙技に舌を巻く。あらゆる音が伸縮自在で、ポゴレリチの掌で転がされているようだ。

シューマンなど、遅い小品は文字通り止まりそうな遅さで、もはや音楽が沈積している。だが、その思わせぶりなところが面白い。こんなシューマンは聴いたことない。ところが、聴いているうちに退屈し始めてしまった。こんな珍品に接しているのに、どうしてだろうと思ったが、どうも、「自分がいま聴いているのは、シューマンではなく、ポゴレリチなのではないか?」という気分が深まっていくのだ。過度な自己主張に付き合わされすぎることに嫌気がさし、興味が持続しなくなっていく。

休憩後のモーツァルトなど、もはや作曲者は、宇宙の彼方に消えていなくなってしまった。モーツァルトの悲しみも憂愁もなく、ポゴレリチ編曲、ポゴレリチ脚色、ポゴレリチ演奏による、ポゴレリチの叙情詩だ。ポゴレリチの慟哭がホールを支配する。

ラフマニノフこそ、あのド派手なロシアン・ピアニズムがポゴレリチの持ち味とマッチし、なかなかの名演だ。これには心から拍手を贈ったが、ポゴレリチはその後もやってくれた。聴き手が疲れ果てる中、おもむろに弾き始めたアンコールは、シベリウスの「悲しきワルツ」。これまた10分近くかかる極遅の怪演で、消え入りそうな弱音が空間を支配する。ポゴレリチは、最後の最後まで、聴衆を徹底的に自分の色で染め上げようとする。そして、聴衆は絶対的服従を強いられる。まさに「空気を読まない力」が尋常ではない。これがポゴレリチのポゴレリチたる所以だ。

結論だが、ポゴレリチは確かに、ゲテモノではなく、一流の才能だと感じたし、あんなピアノを弾く人はほかにいないと確信できた。ピアノという楽器の秘める途方も無い可能性を教えてくれた。一方で、あまりにも個性が勝ちすぎ、ショパンも、シューマンも、モーツァルトなどもはやどうでもよく、コンサートは、あくまで「ポゴレリチを聴く」という命題しかない。彼の世界観に絶対的忠誠を誓えるかどうかが、ポゴレリチのコンサートを楽しめるかどうかの分水嶺だろう。

かく言う自分は、冒頭こそ興味で引っ張れたが、その後は飽きとの闘いも強いられた。しょうもない譬えで恐縮だが、いわばホヤ貝の味わい方みたいなもので、東北出張の時に、現地の地酒とセットで食べるなら美味いが、毎日食卓に並ぶと想像しただけで食傷気味になる。ポゴレリチのピアニズムにどっぷり浸りすぎると、自分の正常な味覚がおかしくなってきそうなので、たまにホヤ貝を食べる気持ちで接するぐらいがちょうど良い。

サントリーホールの聴衆は、この日珍しくマナーが最悪で、咳の輪唱が途絶えることがなく、平気で私語するオッさんもおり、唖然とした。ポゴレリチは、よくあの騒音に耐えたものだ。飴の包装紙を無節操に開ける客もいたが、つまみ出したくなった。そして、足をブラブラさせて拍子をとっていた爺さん、その足が目障りだ。自覚を持ってコンサートを聴いてほしいと強く言いたい。

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