酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS シャルル・デュトワ指揮 NHK交響楽団 『カルメン』 12/11

<<   作成日時 : 2016/12/12 02:06   >>

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これまたいいコンサートに巡り合った。デュトワ/N響の『カルメン』。このコンビの信頼関係が如実に現れた好演で、幕を経るごとに音楽が目に見えて良くなっていった。惜しむべくは、主役カルメン(ケイト・アルドリッチ)の非力だ。むしろ、エスカミーリョ(イルデブラント・ダルカンジェロ)とミカエラ(シルヴィア・シュヴァルツ)の奮闘が印象的。

第1幕の前奏曲から、デュトワの音楽はずいぶん楷書体で、オペラならではの演劇性が薄い。それはそれで一つのスタイルだが、歌手の歌い方一つひとつに対して指揮台上から細やかに指示を出すものだから、さながらオラトリオでも聴いているかのような気分になる。今回は、台詞の部分をオケのレチタティーヴォに編曲したギロー版というものに則った上演で、このチョイスからも分かるように、デュトワは台詞で音楽をブツブツ分断されたくないのだ。それは、アリアのあとに、さながら「拍手は入れるな」と、間髪入れずに次の曲を降り始めるところからも、よく分かる。

序盤から、カルメン、ドン・ホセ(マルセロ・プエンテ)の主役2人が思いのほか弱くて肩透かしを食らったのだが、ひょっとするとこれもデュトワの志向で、自らの音楽的なコントロールが効きそうな中堅どころを配役したのかもしれない。だが、やはり聴きたいのは奔放なカルメンであり、ピュアすぎて頭の中がお花畑のドン・ホセなのだ。デュトワの解釈は、オペラならではのサービス精神が弱すぎると、2幕の終わりくらいまで不満だった。そんな中でも、まさに可憐で可哀想なミカエラは出色であり、ちょいワル闘牛士の出で立ちのエスカミーリョが、舞台に華やぎを添えた。偏見抜きに、やはり場数をこなすダルカンジェロは、NHKホールの殺伐とした舞台を「オペラの場」へと変えた。

ギアが変わったのは3幕の終盤からで、ローギアと2速の間で逡巡していたプエンテのドン・ホセが調子を上げてきて、どんどんいい感じのピュア男ぶりを発揮し始めた。デュトワの指揮もノッてきて、第4幕冒頭など、指揮台上でタンゴを踊るかのごときしなやかな躍動を披露し、笑みがこぼれてしまった。混声合唱と児童合唱が加わると、デッド響きのNHKホールに、これでもかとばかりの音圧が充満した(新国立劇場合唱団の女声陣、特にブラボーだ!)。

そして、どんな名曲をさておいても外せない、迫真のクライマックス、ラストのカルメンとホセの命懸けの掛け合いなのだが…もはやカルメンが力尽きた。歌唱の合間に咳き込む様子も見え、心配になってしまった。一方、ホセは大健闘、デュトワもここぞとばかりに芝居をうち、NHKホールはセビリアの闘牛場へと様変わりした。デュトワのタクトの一撃は驚くべきドラマをオケから引き出し、頼りなげなプエンテは、いつしかドン・ホセそのものに見えてきた。カルメンを刺殺し、呆然と立ちすくむホセのモノローグと慟哭に、なぜか感涙してしまった。こんなに単純でコントのようなプロットであるというのに。いやはや、ビゼーの音楽の魔力はすごい!そして、その魔力を余すところなく引き出したデュトワとN響に、心から拍手。デュトワはもう80歳とのことだが、信じられない。指揮姿は相変わらず矍鑠たるもので、指揮が上手い、上手い!極めて音楽的だ。ただ、オペラを振るにしては細かすぎるけど…。

不満もあったが、とにかく楽しく、時間を忘れた。NHKホールは久々だったが、やはりクラシックにこれほど向いていないホールはないなと、改めて確信した次第。

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