酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

アクセスカウンタ

zoom RSS チョン・キョンファ ヴァイオリン・リサイタル 1/28

<<   作成日時 : 2017/01/28 23:18   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

チョン・キョンファのリサイタル、しかも曲目は、バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタと無伴奏ヴァイオリン・パルティータ全曲という、重量感たっぷりのものだ。ただ、個人的にはこのバッハの無伴奏がいささか苦手だ。CDで聴いていても、あんまり面白く感じない。チョン・キョンファなら、2時間ぶっ通しで「聴かせる」演奏をしてくれるのではと、期待を胸にサントリーホールに向かう。

・無伴奏ヴァイオリン・ソナタ 全曲
・無伴奏ヴァイオリン・パルティータ 全曲

演奏は、エネルギッシュそのもので、チョン・キョンファは恐るべき集中力で全曲を弾ききった。冒頭は音程のズレがかなり気がかりな箇所があったが、一回目の休憩をはさんだ後のソナタ第2番からは、息も苦しくなるような重音、空気と一体化するかのような弱音、緊迫感に満ちた最弱音に引き込まれた。恐るべきエネルギーだ。音色に関して言えば、決して美音を振りまくタイプではなく、鋼のような音も出し、音楽の求心力を突き詰めていく印象だ。シゲティに師事していた時期もあるらしいが、バッハの解釈に影響は受けたのだろうか。

ただ、こればかりは曲の好みもあろうが、率直に言って大感動はしなかった。シャコンヌなど素晴らしいと思ったが、音楽がシンプルきわまりないだけに、サントリーホールのような巨大なホールでは、やや空間を持て余す印象がある。チョン・キョンファクラスになると、サントリーホールを満員にしてナンボという事情は分かるにせよ、やはり紀尾井ホールくらいのホールで、奏者も聴衆も一体になって弱音に聴き入るくらいの方が、繊細なニュアンスは伝わりそうだ。きょうは2階席で聴いたが、1階の前方席などで、迫真のステージパフォーマンスを間近に聴くと、印象が変わったかもしれない。

それにしても、チョン・キョンファはもう68歳になるそうだ。驚いた。真っ白いノースリーブのドレスで、舞台のど真ん中でスポットライトを浴び、2000人を前にして、2時間たった1人で弾き抜くのだ。かっこよすぎるではないか。

パルティータ第1番の急速な音楽で、途中咳き込んで演奏が中断するハプニングもあったが、客席からの「ノー プロブレム!」という掛け声と拍手を受けて立ち直り、一気呵成に弾き通した。つくづく、音楽家いう仕事は、精神的にも大変だと思う。特に、ヴァイオリンは楽器としては小型なだけに、ピアニストなどと比べて、ステージ上での孤軍奮闘感が強い。バッハを2時間、完全暗譜で弾き通すには、恐るべき集中力も必要だろう。

先日のチョ・ソンジンに続き、サントリーホールで立て続けに韓国の一流アーティストを聴いた。政治的には、少女像だ、仏像だと、ここのところ何かとギクシャクする日韓関係だが、ソフトパワーの威力は甚大で、政治的ないがみ合いなんて、つくづくくだらないと感じるし、残念でならない。

終演後、素顔を垣間見たいなと、サインをもらいに行った。2時間弾ききった後とは思えないほど、ど迫力の大声で談笑しながら登場した。演奏に満足していたのか、かなり興奮気味で、「きょうはホールに神が舞い降りた!」みたいなことをファンにまくし立てていた。自分も「すごいパフォーマンスでした」と伝えると、「センキュー ソーマッチ」と噛みしめるようにつぶやき、「ところで、あなたは楽器を弾くの?」と切り返された。自分はただのオタクなので、「いや、聴くの方専門です、あなたのCDもよく聴きます」と言うと、「聴く方専門?それが一番良い、ベスト!」と断言され、爆笑した。いい思い出になった。

ところで、私自身、韓国映画(とりわけサスペンスもの)が大好きでよく観るのだが、チョン・キョンファのエネルギーには、映画によく出てくる肝っ玉オモニにも通じる「強さ」を感じる。韓国映画には、一切の予定調和がなく、勧善懲悪的な「よくある話」がほとんどない。悪は徹底した悪で描き通され、悪が勝利して終わる映画も多い。見終わったあと、死ぬほど後味が悪いのだが、心にザラつきが残り、脳裏を離れない。帰宅して、チョン・キョンファのバッハのCDを改めて聴いたら、これが心を掻きむしるような激烈な演奏で、まさに、上質なノワール映画を観た後のような気分になった。こんなことを言っている自分は、まだまだ偏見にとらわれているのかもしれない。




バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全6曲)
ワーナーミュージック・ジャパン
キョンファ(チョン)

ユーザレビュー:

amazon.co.jpで買う
Amazonアソシエイト by バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全6曲) の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
チョン・キョンファ ヴァイオリン・リサイタル 1/28 酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる