酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS エリアフ・インバル指揮 五嶋龍(Vn) ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団 3/19

<<   作成日時 : 2017/03/19 19:32   >>

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やっぱりインバルのマーラーはすごい!昨日に引き続き大感激。『巨人』は名演至難楽曲だが、インバルは完璧にこの交響曲を自分のものとして手中に収めきっている。そして、五嶋龍のメンデルスゾーンがこれまた面白い。とことん丁寧に弾きこまれ、すこぶる個性的な演奏。インバルの質実な伴奏も冴え渡る。完成度が高い名演だ。

【前半】
・ワーグナー 楽劇『トリスタンとイゾルデ』〜前奏曲と「愛の死」
・メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 ホ短調

【後半】
・マーラー 交響曲第1番 ニ長調 『巨人』

6日前にすみだトリフォニーホールで聴いたばかりのワーグナー。随分印象が違う。テンポがかなり遅くなったように感じる。弦のニュアンスがかなり強調される。ただ、管にミスが散見され、全体的にやや集中力が甘い感じ。トリフォニーホールでの演奏の方が求心力が高かった。まぁ、長大なプログラムの序奏を飾る音楽だけに、最初から完全燃焼しても仕方ない。豊麗で厚みのある弦のアンサンブルは健在。うれしくなる。

続いて、五嶋龍を迎えてのメンデルスゾーン。個人的には、去年11月のベル(ハーディング指揮パリ管)、先月のレイ・チェン(サラステ指揮新日本フィル)に引き続いての実演。

聴く機会が多い中で、きょうの演奏はひときわ個性的。とにかくテンポが遅く、表情付けがとても丁寧で、「弾きこまれている」印象なのである。インバルの伴奏も、一歩間違えれば「生硬」との謗りを受けかねないような楷書体で始まったが、徐々に木管や金管に柔軟なキューを出したり、遊びを混ぜていく。さすが大ベテランである。

五嶋龍は、一箇所たりとも、一音たりとも「弾き飛ばす」ことなく、加速したくなりそうたフレーズでも、むしろ歩みを遅め、音を紡いでいく。第1楽章のカデンツァで少し音程が狂いかけたが、立て直した。

第2楽章は、陶酔的なまでに美しかった。時間が止まったかのような瞬間がいくつもあった。丁寧で繊細なソロに息を呑んだ。

そして、フィナーレも「快活」という言葉の対極をいく、悠揚たるテンポでの演奏。決して楷書体の堅苦しさはない。インバルの恰幅のいい伴奏と相まって、正味全曲30分の名演奏を成し遂げた。

それにしても、五嶋龍の弾き方は独特で、客席を直視するかのようなスタイルでヴァイオリンを弾く。時に楽しそうに、嬉しそうに弾く表情が印象的である。チャイコフスキーのコンチェルトのCDでも感じたのだが、「若いから、スピード感溢れた、エネルギッシュな演奏をするだろう」という先入観を、きれいさっぱり振り払うようなソロを弾くヴァイオリニストである。先日のウルバンスキの音楽でも感じたことだが、「若さ」を逆手に取った音楽づくりが、胸を空くほど小気味良い。

ソロ・カーテンコールではヴァイオリンを持たずに登場し、「アンコールは弾きませんよ」と、サラッと笑顔で意思表示をする。このあたりの新世代感も、爽やかな良さがある。

後半はいよいよ『巨人』。去年11月の、ティルソン・トーマス/SFCOの演奏にあまりにもがっかりし、この曲は「名演至難楽曲」の仲間入りを果たした。冷静に考えると、第1楽章はフィナーレまでほとんど盛り上がらないし、スケルツォも緩徐楽章も、マーラーの中・後期作品ほどの味わいはない。第4楽章で燃えつくし、歌い尽くしてもらって、ようやく堪能できました、といった具合の音楽である。未だに、10年近く前に、シャイー/LGOがやってのけた離れ業のような大名演が奇跡として脳裏を離れない。

今日のインバルの演奏も、迫力ではシャイーに及ばないが、マーラーのオーケストレーションの妙味を目一杯に引き出した、ユニークな大名演である。

インバルのマーラーの特徴は、場面場面における「主役」となる楽器が明瞭であることである。「ここはチェロ、ここはホルン、ここはクラリネット」とバトンが渡されていき、音楽の筋が貫徹されていく。こういうスタイルだからこそ、演奏によっては散漫になってしまう第1楽章も、あたかも『オーケストラのための協奏曲』のような面白さを帯びるのである。アタッカで演奏された第2楽章、そして第3楽章も同様。とくにの第3楽章の楽器の鳴りっぷりが胸を空く。

フィナーレは、冒頭、やや直線的・平面的に突っ走ってしまい、「インバルお疲れか?」と案じたが、絶美の第2主題のカンタービレから本領を取り戻してきた。先日聴いた5番のアダージェットでも感じたが、静謐な弱音に美しさの限りを凝集するインバルの手腕に恐れ入る。そして、破壊力抜群の中盤以降の畳み掛けはすさまじく、弦は一糸乱れず鳴りまくり、金管は魂の限り咆哮し、打楽器も我を忘れて打ち鳴らされと、ありったけの音がホールを満たしながら、巨大なエネルギーを満たしたまま、一気呵成に全曲が閉じられたのである。ブラヴォーの大合唱となった。

オケは、間違いなく6日前の東京公演よりノッてきている。全国行脚の途上の大阪公演で、ここまで本気で燃えたマエストロとオケに、心から拍手。

インバルのマーラーは「特別」である。改めて、その感を強める。当代最高のマーラー指揮者であることは間違いない。日曜午後のザ・シンフォニーホールはほぼ満員。拍手のタイミング含めて、大阪のお客さんの水準はかなり高い。

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