酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル 3/22

<<   作成日時 : 2017/03/21 22:51   >>

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アンドラーシュ・シフは、間違いなく現代最高のピアニストである。とりわけ、バロックと古典派、そしてシューベルトにかんしては、右に出るものは誰一人としていない。テクニックもニュアンスも、全てにおいて次元が違う。圧倒的である。シフのシフたる所以を、骨の髄まで味わい尽くすリサイタルだった。ピアニズムの神がオペラシティに舞い降りた。

・モーツァルト ピアノソナタ第17番 変ロ長調
・べートーヴェン ピアノソナタ第31番変イ長調
・ハイドン ピアノソナタニ長調Hob.XVI:51
・シューベルト ピアノソナタ第20番イ長調

正直、モーツァルトとベートーヴェンは、そんなに感動できなかった。繊細かつ清澄なピアノを弾くシフの割に、響きが硬く、ニュアンスがやや乏しいと感じた。ハイドンでギアを上げたが、自分がこれまで聴いてきたシフのしなやかなピアニズムとは、ちょっと違う。

たが、全ては最後に神がかったシューベルトを弾くための、周到な旅路だったのだ(だから休憩なしなのだろう)。シューベルトは冒頭から気迫が違う。第2楽章の悪魔に憑かれた音楽は、シューベルトが乗り移ったかのようだ。鍵盤を弾いてから、音がホールに満ちるまでの、絶妙なタイムラグ、言うなれば「シフの間」の響きは言語を絶する美しさであり、こんな美しい音が地球上にあっていいのだろうか、と思ってしまう。驚くほど上質で、高級で、幸福なひと時に身を委ね、酔いしれる。

ピアノという楽器は、確かに絶叫するようなフォルテにも、生々しいニュアンスがある。しかし、シフの音は常にふくよかで、性能が進化しまくったピアノという楽器の最大の美質の、しかもその一番の上澄みの部分を、「フッ」とすくい上げて音にしているかのようだ。

シューベルトが終わった。観客は大熱狂だった。ここからがすごかった。当夜のコンサート、第2幕の始まりである。

シューベルトの3つの小品、バッハのイタリア協奏曲全楽章、ベートーヴェンの6つのバガデルより1曲、モーツァルトのK.545第1楽章、そして、シューベルトの楽興の時第3番。アンコールピースを集めた、40分に及ぶ、遠大なる旅路である。

これまた、アンコールピースなどという安っぽい呼称とは似ても似つかない、最高級の小品リサイタルである。シューベルトの3つの小品も、大ソナタのような巨大なニュアンスに満ちていて、その完璧無比なるクレッシェンドの妙技に、脳天を「ガーン」とノックアウトされた。続くイタリア協奏曲は、シフの真骨頂であり、息を呑むのみ!囁くような軽やかな弱音で紡がれていく、緻密極まりないバッハの小宇宙!さらなる圧巻は、モーツァルトのK.545!鈴を転がすかのように、装飾音の遊びを目一杯にまとわせて弾き進められるモーツァルトの音楽の、なんと美しいこと!(K.545は、楽器演奏がニガテな自分の、数少ない演奏レパートリーで、今朝も気晴らしに弾いたところだった。シフの演奏を聴いて、こんなに美しい音楽なのだと初めて知った。改めて、自分には何の才能もないことがよく分かった。シフが恐るべき巨大な才能の持ち主であることも、よく分かった。)

アンコールのバッハで感涙し、モーツァルトで失神しそうになった。

打ちのめされた。シフの実演は3度目だが、アンコール含めて、今日は恐ろしいまでの完成度だった。本人も演奏に納得したからこそ、「まだまだピアノを弾きたい」気分になって、あれだけのアンコールを弾いてくれたのだろう。アンコールを弾くシフは、遠目からは、「楽しそう」に見えた。

シフは、間違いなくテクニックにおいても個性においても、現代最高のピアニストである。間違いない。自分は演奏の好き嫌いが激しく、これまで、ポリーニやツィメルマンの実演でも、さっぱり感動できず、悔しい思いをしてきた。でも、時折、こんな爆弾のようなコンサートに出会えるのだ。人生捨てたものではない!

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