酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS 【雑記帳】インバルのマーラーを聴いて大発見したこと

<<   作成日時 : 2017/04/03 14:17   >>

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昨夜、インバルとベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団によるマーラーが、テレビで放映されていた。実演で聴いたコンサートだ。当夜ホールにあふれた豊麗な弦の響きは、全く追体験できなかった。それは残念。テレビだから仕方ないけれど。そして、前半のワーグナーでは、思わぬ瑕疵ばかりが目立って、白けてしまった。あの日は随分感激したのに、印象が変わってしまうものである。逆に、マーラーの方は、細部の解釈が際立ち、面白い。インバルの指揮が正面から捉えられているので、オーケストラに何を要求しているかが、明瞭に分かるのだ。

そういった事情をさておいて、一つ発見したことがあった。

当夜のマーラーでは、この交響曲の第2楽章、倒錯しきった渦巻くようなポリフォニーの大宇宙が、なかなか「収束」しない。このもどかしさは何なのか、と聴きながら感じていた。4年前、みなとみらいホールで聴いたインバルと都響の同楽章が、対極的なまでに「収束」しきった演奏だったからだ。一体化したドライヴ感のもとで、激烈に疾走するマーラーだったからだ。なんで、同じ指揮者が同じ曲を振っているのに、こうも違うのか。分からない、分からない、と疑問がグルグル渦巻いた。インバルの齢の変化があるとは言え、やっぱりオケの違いに大きく起因するとしか思えない。

その時、脳内で光が弾けた。アルキメデスのように、「エウレカ!」と小さく叫んだ。(アホみたいなことを言って恐縮だが)日本のオケは、指揮者の意図の「忖度」の達人集団なのではないか、と気づいたのだ。インバルの意図を120%汲み取る忖度力があり、表現する技術力があるのではないか、と気づいたのだ。

翻って欧米のオケは、忖度したとしても、その忖度を振り払う「私」がある(もちろん日本のオケにもあるのだろうが、きっと比ではない)。決して容易く指揮者のコトバに乗せられて、まとまろうとはしない。オーケストラであっても、「演奏する私」が大事である。だから、音楽が時に散逸し、バラバラになる。

ここで、「とは言っても、ベルリン・フィルや、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、さらにはバイエルン放送響やシカゴ響は、一糸乱れぬ無比な演奏をするのではないか!」という反証が出てくる。これは真である。超一級のソリスト陣でもある彼(女)らに、「私」がないはずはない。むしろ、溢れ出んばかりの「私」を表現しきっているはずである。では、なぜ演奏がまとまるのか…。

ここまで考えて気づいたが、それこそが「和声感」の正体ではないか。要は、「忖度」しての「まとまり」の、ワンランク高次の世界である。まとめ上げる指揮者の技量にもよるが、それぞれの奏者の自己表現を最大化した際の総和が、「和声感」ではないか。だから、ベルリン・フィルはベルリン・フィルなのであり、バイエルン放送響はバイエルン放送響なのではないか。

個々の奏者の技量が「収束」もしくは「統合」されなかった場合、音楽は著しくまとまりをかき、破綻に追い込まれる。「私」が100人溢れかえった音楽集団を統率することの難しさは、想像を絶する。指揮者が、その音楽性と知力と感性と品性と人間性を研ぎ澄まして、全力でオーケストラに対峙したとき、その高次な共同作業の産物として、圧倒的な音の大伽藍が築き上げられる。この明々白々な真理に、ハッと気づかされたわけである。

日本のオーケストラが単なる忖度集団だと言うつもりは一切ない。むしろ、だからこその魅力がある。インバルとあんな途轍もないマーラーを演奏してしまうわけである。欧米は指揮者陣が、なぜ日本のオーケストラを重宝するのか。それはきっと、オーケストラとしてのあり方が、欧米とは全く違う(正反対である)からではないか。自分自身を、徹頭徹尾試せるからではないか。だから、ジョナサン・ノットは、古都バンベルクで積み上げてきた重厚な和声の伝統と解釈を、東京のオーケストラと一から組み立て直し、実験したいのではないか。バッティストーニは、自分がチャイコフスキーのスコアからパッションとして感じとった「何か」を、東京のオーケストラがここまで「音」にしてくれることに、驚嘆しているのではないか。いわんや、カンブルランである。

何を分かり切ったことを、と誹りを受けるかもしれない。オーケストラ文化の違いを再確認することで導かれた結論は、あまりにも当たり前のこたかもしれない。しかし、これほど本質的な文化・文明論的相違があろうか(時に「森友」、でもある)。インバルのマーラーを聴きながらこんなことを考え、こんな結論に至り、本人はけっこう「すごいことに気づいてしまった…ワナワナ」となっている次第である。

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