酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS エサ・ペッカ・サロネン指揮 チョ・ソンジン(p) フィルハーモニア管弦楽団 5/14

<<   作成日時 : 2017/05/14 18:22   >>

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大型プログラムによる超お楽しみ演目のコンサートで、めちゃくちゃ楽しみにしていたのだが、ベートーヴェン、マーラーともに信じられないほどの超名演で、ぶっ倒れそうになった。まずソリストが、個人的に大いに買っているチョ・ソンジンであり、しかも指揮者がお気に入りのサロネンであり、しかもプログラムの後半は『悲劇的』なので、もうこれ以上何を望もうかというところだ。しかも、実際の演奏は、期待を大きく上回るものだったのだ。日曜の昼から、西北の兵庫県立芸術文化センターにて。この状況設定も完璧。半年前にヤンソンスのマーラーに打ちのめされたホールである。

【前半】
・ベートーヴェン : ピアノ協奏曲第3番 ハ短調 (独奏: チョ・ソンジン)
【後半】
・マーラー: 交響曲第6番 イ短調 『悲劇的』

前半のベートーヴェンから絶好調だった。冒頭こそチョ・ソンジンのピアノはやや性急さが目立って座りが悪かったが、徐々に決まってきて、何よりこのピア二ストが奏でる弱音の美しさは筆舌に尽くしがたい。

それにしても、嬉しい誤算だったのはサロネンの伴奏が素晴らしくスタイリッシュかつ質実だったことで、ティンパニには古楽風の硬質な楽器を用い、弦のヴィブラートもかなり抑制して弾かせていて、非常に風通しがよくクリア。かといって軽くはならず、ベートーヴェンの音楽ならではの重みや渋みにも事欠かず、最高に洗練されている。

第1楽章のカデンツァで、ピアノからフォルテまで縦横無尽に魅せたソンジンの妙技には舌を巻いたが、輪をかけて、カデンツァが終わり、オケが入ってきたところで、両者が緊張感溢れるピアニッシモでホールの空気を完全に支配した瞬間が、卒倒するほど素晴らしかった。そこからクレッシェンドしての圧倒的な終結、これ以上何を望もうか、である。

第2楽章の美しさも素晴らしかったが、躍動感に満ちた第3楽章にも大いに酔いしれた。チョ・ソンジンとサロネンの共演では、やはりサロネンが音楽を引っ張っていっていて頼りがいがあり、ソンジンも持ち前の弱音の美学で必死に食らいついており、右肩上がりに音楽がよくなって、すばらしいコンビだと思った。アンコールは『子どもの領分』から「人形の家」。ミシェル・ベロフに師事していることもあり、ソンジンのドビュッシーは素晴らしい。先日聴いたベルクも素晴らしかったが、近現代物に大いに適性があり、これからがさらに楽しみである。

さて、休憩後のマーラーだが、これはもうサロネンの卓抜した音楽性と、フィルハーモニア管の信じられない巧さを味わい尽くす、至福の、圧倒的な80分間であった。第1楽章の冒頭から、サロネンの指示した遅めの歩みとともに低弦が唸るように鳴り始め、そこから巨大な音の火の玉のようなエネルギーが溢れかえり、もはや奔流と化してホールを満たした。アルマの主題はじめ、サロネンは随所でテンポを揺らしまくるが、決してぶれず、音楽の軸が貫かれるところが素晴らしい。第1楽章の圧倒的な終結の後には、もはや感嘆とともに悲鳴のようなため息がホールを覆う。

第2楽章はスケルツォで、個人的にはこの配列が好み。下手な指揮者が振ると一本調子で聴いていられないような音楽だが、サロネンの手にかかると緩急自在にリズミカルに推進して全く飽きない。指揮棒を持たずに振った第3楽章のフレージングも美しく、音量と振幅も存分にあり、大満足。

そして、圧巻のフィナーレは、まさに欧米オケ特有の和声の馬力がホールを吹っ飛ばすほどに極大化し、何より金管、とくにトランペットがなんと巧いことか!!!決してオケのハーモニーから遊離せず、フォルテシモのトゥッティの中でも独自の存在感を維持し続けるのだからさすがである。そして、ハンマーが2度打ち下ろされ、サロネンという船頭に導かれながら、オケ、そして聴衆ともども、総奏による圧倒的な大終結まで導かれ、半ば声にならないような声のブラヴォーの大絶叫が飛び交う壮絶なカーテンコールを迎えた。サロネンは一般参賀あり。

サロネンとPOによる『悲劇的』は、実は10年近く前にルツェルンで聴いているのだが、その時は現着翌日で、ひどい時差ボケにたたられ眠りに堕ちてしまった…。今日は、まさに雪辱を果たすつもりで西宮まで押しかけたのであるが、幸いホールど真ん中近くの良席を確保でき、あまりの圧倒的名演に打ちのめされ、これ以上ない満足感に浸りながら帰路についた次第である。

『悲劇的』も、指揮者とオケを選ぶ名演至難楽曲だと思うが、今日の演奏は、失礼ながら、先日のヤルヴィ&N響が遠く霞むような完璧すぎる名演だった。当分、他の演奏は聴いていられなくなるかもしれない。適度な響きの西宮のホールで聴けたことも結果的に良かったかもしれない。

なお、横の男性が前半のベートーヴェンからずっと手元で指揮マネをしており、後半のマーラーでもやめる気配がなかったので、さすがに注意した。すると、今度はさらにその右隣のオッサンもずっと指揮マネをしていることが発覚し、それも目障りでしかたなくなってきたが、キリがないので黙っておいた。

音楽に合わせて指揮マネをしたくなる気持ちは分からなくもないが、コンサートでやられると、本当に目障りである。テンポ感覚を狂わせられるのである。足をブラブラさせて拍子をとる人も同様。心からのお願いであるが、ジッとしておいてほしい。本当に迷惑なのである。

終演後は、サロネン詣で。長蛇の列ができていた。「今週末の東京での『ツァラトゥストラ』も楽しみにしています」と伝えると、「OK!」と感じが良い。

サロネンは過去日本で1回、ルツェルンで1回、ドルトムントでの壮絶な『トリスタンとイゾルデ』と実演を聴き重ねて来て、その都度ノックアウトされる。これからも聴き続けたい指揮者である。

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