酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS チョ・ソンジン ピアノ・リサイタル 5/17

<<   作成日時 : 2017/05/17 22:38   >>

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先日のコンチェルトに引き続いての、チョ・ソンジンのリサイタル。誤解を恐れず言えば、今日は完全なる「大人のチョ・ソンジン」を聴くリサイタルで、ショパンの素晴らしさはもちろんのこと、舌を巻いたのは完璧無比なるドビュッシーである。これ以上の洗練があるだろうか?これほどまでピアノを「弾きこなす」ピアニストがどれほどいるだろうか?これだけ上質な時間を堪能できるコンサートが他にあるだろうか? 運よく1階席の前から10列目、ピアノの反響板の真正面あたりに座って聴いたが、あまりにも音色が美しく、時空を超越した場面を共有しているかのようで、意識が遠のくほどだった。照明が落とされた東京芸術劇場のホールは、夢幻的なまでの美しさを湛えていた。

【前半】
・ドビュッシー : 『子どもの領分』/『ベルガマスク組曲』/『喜びの島』
【後半】
・ショパン : バラード全曲

敢えて言うが、個人的には今日のコンサートの白眉はドビュッシーだと思った。雲をつかむような「音楽の印象派」を、絵画のようなニュアンスと色彩感で、これ以上ないほど鮮やかに描き切ってみせるのだから、度肝を抜かれっぱなしである。先日のベートーヴェンの際には、「弱音の美しさ」を特筆したが、この印象はそのままに、フォルテにも騒々しさは全くなく、余裕のあるタッチで、フォルテ1つとっても、無限の音色を引き出してしまうのである。神がかったテクニックの持ち主であり、まさに「魔術師」である。

後半のバラードもむろん非の打ち所がなく、最高級のショパン、ショパンの中のショパンであることは間違いない。第1番は、1月にサントリーホールでアンコールとして聴いて以来だが、数ヶ月でさらにニュアンスが深化した気がしたし、DGレーベルからリリースされている録音よりも解釈が深まっている気がする。ソンジンは一度習得したレパートリーを丹念に入念に弾きこむタイプと見えるが、その分演奏自体は言語を絶するほど磨き上げられ、紡ぎだされる音楽は、「いまこの瞬間」に生み出される即興芸術とは信じられないほどの到達点に達している。しかも、それでいて、コンサートでは手に汗握るほどの高度な即興味で聴衆を酔いしれさせてくれるのである。

サービス精神旺盛に、アンコールは、モーツァルトのピアノ・ソナタ第12番の第2楽章、リストの『超絶技巧練習曲』から『マゼッパ』、ドビュッシー『映像第1集』より『水に映る影』、そして、リストの『ラ・カンパネラ』の計4曲。

これまた穿った感想かもしれないが、この4曲で自分が最も感銘を受けたのはモーツァルトで、次いでドビュッシーだった。ソンジンの音色は、最高にクリアなタッチの音を、絶妙な加減にペダルで伸縮させる独自のものだが、それゆえにシンプルきわまりないモーツァルトが最高に美しく響く。素材の風味と鮮度を、厳選されたわずかな調味料で最大限引き出した、とう具合に。ドビュッシーも流儀は同じながら、こちらには恐ろしいまでの色彩感を纏わせる。あまりの表現力に戦慄しっぱなしで、「飽きる隙」を全く与えない。

これでいて、ショパン・コンクールの優勝という経歴の持ち主なのだから、無敵であり、超絶技巧の限りを尽くして弾かれる熱狂的なリストにも当然心奪れるのであるが、個人的には、今日はドビュッシーでコンサートを終えても、それはそれで豊かな余韻とともにコンサートを聴き終えられたかもしれない、と思った。

ショパンのみならず、ドビュッシー、モーツァルト、シューベルト、ベートーヴェン、そしてリストやベルクと、着実にレパートリーを増やしているところが頼もしい。ショパン・コンクールの歴代覇者は、「何でも弾きこなす」ポリーニやアルゲリッチ、ドビュッシーのエキスパートのツィメルマン、最近バッハで大躍進のブレハッチと、まさしく多士済々の顔触れ。この若さでこれだけの離れ業をやってのけるチョ・ソンジンは、本当に末恐ろしい。個人的には、シューマンやラヴェルをぜひ聴いてみたい。

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