酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS シモーネ・ヤング指揮 ベフゾト・アブドゥライモフ(p) 読売日本交響楽団 6/24

<<   作成日時 : 2017/06/24 20:47   >>

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魅力的なプログラムで、しかも馬力の読響のパフォーマンスということなので足を運んだ。女流指揮者ヤングは、去年東響のコンサートを聴いて以来だが、かなり硬直したブラームスに違和感たっぷりだった。きょうは『アルプス交響曲』ということもあり、力で押しまくる演奏も聴いてみたかったし、前プログラムがアブドゥライモフとのプロコフィエフというのも大変魅力的。

プロコフィエフは相当の名演だ。アブドゥライモフというピアニストが、まずなかなか素晴らしい。大きな体躯で、縦横無尽に指が鍵盤を駆けめぐる大胆なパフォーマンスでありながら、音色がとても瑞々しく、繊細さもある。テクニックが抜群で、この難曲を鮮やかに弾き抜ける。

去年東響ではドヴォルザークのチェロ協奏曲を指揮したヤングだが、この指揮者のコンチェルトの伴奏はなかなか挑発的で、まさに丁々発止、刺激に満ちた素晴らしいものだ。きょうも、ピアノに食ってかかるように管を咆哮させ、打楽器を打ち鳴らし、一切の容赦がない。叙情味を売りにするソリストとは反りが合わないかもしれないが、アブドゥライモフのようなエネルギッシュな若手とは息がぴったり合う。

それにしても、プロコフィエフのこのコンチェルト、20世紀の音楽の中でも屈指の名曲だと改めて痛感した。決して難解でないが、火花が散るような鮮烈なモダニズムが散りばめられていて、第3楽章には『越後獅子』風のエキゾティックのフレーズが埋め込まれ、ジリジリと静謐に音楽が進んだかと思えば爆発的に瞬間沸騰してみせ、飽きる隙を与えない。演奏効果抜群で、何よりアルゲリッチが大得意とするワケがよく分かる。

後半は、お待ちかね『アルペン』。ヤングは予想通り大爆発してくれた。在京オケで、鳴りの良さにかけては右に出る者がない読響が本領発揮、これまた鳴らすのに長けたヤングの持ち味との相乗効果で、圧倒的な音楽の構築物を築き上げてのけた。

正直、個人的には圧倒的に『英雄の生涯』が好きで、その次に『ツァラトゥストラ』、『アルペン』は正直実演で「オケの鳴り」を聴くためのツールのような音楽だと認識しているのだが、だからこそ鳴ってくれないと面白くない。登頂の爆発的な歓喜、そこからの吹き荒れる大嵐には、手に汗握る。

ヤングの音楽づくりはよく言えば視界最良高、新緑のアルペンを健康的にハイキングしながら登っていく趣で、正直あんまり翳りがない。トゥッティ部分でも弦のむせ返るようなシュトラウス節をきっちり際立たせるあたりが、さすがの練達ぶりである。一方、音楽の性格上、中盤にかけてと、終盤の静謐な経過句など、正直ちょっと退屈してしまった。もう少し、不健康に、油絵風に黒絵具をコッテリとキャンバスに塗りつけるような演出があっても良かったのかもしれない。

ところで、公演プログラムを読んでいたら、この『アルペン』をシュトラウスが『アンチ・クリスト』と名づけたというエピソードが記されていた。そこには、「自然を前にして己の無力を悟るニーチェのモティーフが聴き取れる」という注釈があったが、これは誤解ではないだろうか。ニーチェは、別に自然を前にした人間の無力を説いたのではなく、スイスの清澄な山中に身を下ろし、精神を鍛え、身体を鍛え、「力への意志」を獲得し、「永遠回帰」の世界を「超人」として生き抜く能動的ニヒリズムを説いた。「人間の無力さ 」の真逆、「人間の力」を身体中に横溢させることを説いたのだ。難癖をつけるようで感じが悪いが、シュトラウスとしては、ニーチェの哲学を音楽化したわけではなく、自らを掻き立てるニーチェ的世界観を音画として描出してみせたのであるから、その試みは十二分に達成されているのだろう。

終演後はサイン会に並んでみた。アブドゥライモフはシャイな青年で、ヤングはさすがのバイタリティ、かして貫禄十分。「とてもドラマティックな演奏でした」というと、「とてもドラマティックな音楽だからね!」と意気軒昂、こちらも「ところでまたワーグナーのオペラを日本でやってください」と口走ったら、「機会があれあればぜひやりたい!」と乗ってくれた。

音楽の適性を選ぶ指揮者だと思うが、堂に入ったステージパフォーマンスといい、カッコいいことこの上ない。

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