YouTubeでみつけた、小澤征爾ドキュメンタリー

 毎日更新したいものの、時間がそれを許さない。できる限り更新しようとは思う。

 今日、YouTubeを漁っていたら、小澤征爾に関する面白い映像を何本か見つけた。ひとつは、以前NHKで放映された「小澤征爾――魂の響きを伝える」というドキュメンタリー。また、もう一つは、ドキュメンタリー映画、「OZAWA」、さらに、もう一本は、「たけしの誰でもピカソ」で小澤を扱った放送分、その3本である。

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 一本目は、おそらくNHKスペシャルか何かである。ロストロポーヴィッチとともに、演奏者数十人を率いて、東北の諸都市(村レベルも含め)を演奏してまわる、「キャラバン」の取材が面白い。何の事前のアポイントメントもなしに、一地方都市(町や村)を訪れ、そこの小学校の体育館、もしくは寺院の本堂などを借りて、演奏会をやっている様子が記録されている。クラシック音楽になじみがない人々が、文字通り「ふらっと」会場に足を運び、ロストロポーヴィッチと小澤が生み出すハイドンやサン=サーンスに舌を巻く姿がみられ、面白い。
 利潤度外視の、こういう活動を小澤がやっているとは、知らなかった。小澤のハイドンはこれまで聴いたことがなかったのだが、練習段階では、微細なフレージングにまで事細かに指示を飛ばし、一方で決して重苦しい雰囲気の練習には仕立てない。どうやら演奏者は若手集団のようで、小澤のアドバイスを受けて、表現に磨きがかかってくるのが如実に分かる。やや重厚ではあるが、美しく、典雅なハイドンだ。クラシック音楽を日常的に聴かないという人相手でも、決して音楽づくりを妥協しない点、さすがプロである。むしろ、普段の演奏会とは違った意味で、気合を入れているのかもしれない。
 この番組では、ウィーン国立歌劇場の音楽監督に就任して間もないころの小澤が、このオペラハウスで、クシェネクの『ジョニーは弾き始める』をプローベしていく様子がつぶさに追われていて、興味深い。この歌劇場の日常の一端を垣間見られる(おそらく、普段のレパートリー上演よりは、数段気合が入った状態だとは思うが)。
 あと、小澤のボストンの邸宅、勉強部屋も映る。

 二本目の「OZAWA」。これは、一本目より面白い。作成はアメリカなのか、小澤は基本的にインタビューに英語で答えている。
 ルドルフ・ゼルキン、ヨー・ヨー・マ、ジェシー・ノーマンらとの共演の様子が追われたりするが、中でもマとの食事シーンが面白い。「東洋人に西洋音楽を演奏することは可能か、とか昔よく議論したよね」とマに話かける小澤に対し、マが、「可能だ」と真剣に話し始め、空気は深刻化。小澤がとうとう、「カメラを止めてくれ」と言い出す事態にまで発展している。
 また、小澤が若い日本人指揮者相手に、『魔弾の射手』序曲のレッスンをつけているシーンも面白い。この若い日本人、今どうなっているのが知らないが(ひょとすると大指揮者になっているのかもしれないが)、とにかく、あがってしまって、指揮もかたい、小澤にもレスポンスできるどころの心境ではない、さらに、オーケストラの奏でる演奏もガッチガチに硬直しているのである。小澤は、「オレをモンスターだと思っているのか?」と冗談交じりに語りつつ、短い休符から次のパッセージに流れよくもっていく方法論を、繰り返し教え込む。自分を含め、素人なら垂直に大きく指揮棒を振りおろしてしまいたくなるような強奏の楽句でも、「そこでそう大きく振ると、オケの出が半拍ずれ込む」と指摘し、あくまで柔和に振らせる。目からウロコの思いであった。詳しくは知らないのだが、斎藤メソッドとは、こうしたことを教え込むものなのだろうか。
 この若者を、小澤が深夜自らのところに招き、酒を飲みつつ指揮者の心構えを語るシーン。このシーンは爆笑ものである。酒で気分がよくなったのか、小澤の表現が一層ユニークで面白くなっている。また、ザルツブルクでのカラヤンとの面会シーンも貴重。
 ちなみに、この映画の最後のキャスト・製作者欄に一瞬名前が登場するピーター・ゲルプという人物は、クラシック音楽産業界を牛耳る音楽マフィアの一味である、と、ある本に指摘されている(石井宏氏の文庫本である)。あまり考えたくない話だが、こういう世界も、きっと裏側には広がっているのだろう。ただ、この石井氏の本は、偏見が強く、文章内容も説得性が低いと感じたのでで、個人的にはあくまで一時の暇しのぎ、と思って気軽に読んだ。

 三本目、誰でもピカソ。これは、あえて多くは語らないが、コメディーの要素も多く、分かりやすく、親しみやすい。神奈川での『スペインの時』と『ジャンニ・スキッキ』の舞台を追ったものであるが、ビートたけしが小澤と二人でこれまた爆笑の世界を築いている。たけしと小澤のダンスシーンなど、抱腹絶倒ものだ。よく考えれば、両者とも、「世界の」の語を冠してよばれる、芸術界の巨匠であるのだ、とふと思い出した。北野武の映画は、どうも暴力性が強すぎるような気もしないでもないが…。
 この映像、さらに凄いのは、ファン・ダムや、フォン・シュターデが、たけしと小澤の掛け合いに爆笑し、また、たけしの指揮のもとダムが歌い、そして渡辺満里奈が前述二名含めた歌手陣にインタビューをおこなったりしていること。ファンでもなければ、ダムやシュターデなど、「誰それ?」であろうが、オペラ好きからすれば、「大」がつく世界的歌手である。まさか、この歌手陣の素顔を、日本の一民放番組で垣間見られるとは思わなかった。

 いずれも面白い番組である。時間があるとき、ぜひご覧になるとよいかと思う。
 
 

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