フィリップ・ヘレヴェッヘ指揮 仲道郁代(p) 新日本フィルハーモニー交響楽団 6/1

久々に新日本フィルの本領を聴いたような気がする。初共演のフィリップ・ヘレヴェッヘとのドイツ・ロマン派プロ。メンデルスゾーンの『フィンガルの洞窟』に始まり、シューマンのピアノ協奏曲、そして同じくシューマンの交響曲第2番と続くなかなか味のあるプログラム。特に交響曲は迫真の演奏。ピアノ協奏曲のソロは仲道郁代さんが弾いたが、きょうは演奏中にちょっとしたハプニングがあり…なかなか緊迫感漂うコンチェルトとなった。

冒頭の『フィンガルの洞窟』はそれほど印象に残らなかったが、舞台配置でいうとステージ最高峰に6本のコントラバスが並ぶ形で、バスの音がしっかりとオケ全体を包み込んでいるようで構造が聴き取りやすい。

続くコンチェルト、冒頭から比較的正攻法の印象で、ヘレヴェッヘの伴奏も古楽の影響がそれほど際立たない。仲道さんの弾くヤマハのピアノ、やや硬質な音色だがシューマンのロマンをしっかりと湛えていて、堅実。心地よく、うつらうつら…となりかけた第2楽章でハプニングは起きた。

2階席付近からけたたましく鳴り響いた、防犯ブザーのよくな強烈な音。昔、小学生のランドセルについていたような、紐を引っ張ったら「ピロピロピロ」と甲高い強烈な音を発する防犯ブザーっぽい音が、シューマンの絶美のメロディアスな旋律、しかもピアニッシモの部分に覆いかぶさってきてしまったのだ!!! 正直、演奏が止まってもおかしくないレベルだと思った。音は10秒近く持続したか。

しかし、オケもピアノも止まらず演奏続行。さすがプロである。しかし、自分の耳には、ここから明らかに仲道さんのピアノがバランスを崩していったように聴こえた。とにかく、ミスタッチがあちこちに出始め、音楽の緩急が安定しない。第3楽章に入ったらさらに不安定さに拍車がかかり、オケも「何となく合わせねば!」と必死に合わせる。崔コンマスの身振りに危機感が現れているような気がした。とにかく、ピアノのソロパートのたびに、「大きく崩れなければよいが…」とハラハラしたが、駆け抜けるように(やややっつけ感があった)終結。客席からは意外とブラヴォーが飛んでいた(あんなけたたましい音が鳴って動揺したのに、よく弾ききった、というブラヴォーも含まれていたのかもしれない。)これはこれで緊張感溢れるコンチェルトのパフォーマンスということでもあるのだが…。

アンコールに絶美のトロイメライ。これは安心して、心打たれて聴いていたら、1階後方からまたしても携帯の着信音。そもそも、悪いのは客の側である。バカモノ、電源切っておけ!

休憩を挟んでシューマンの2番。これは見事!ブラヴォー!迫真の大熱演である。ここ最近、上岡監督の振る新日本フィルばかり聴いていたら身としては、とにかくオケが久々に「あるべき」響き、新日本フィル元来の持ち味を取り戻した気がした。アンサンブルもきれいだ(シューマンのオーケストレーションはやはり汚いが)。

何より、オケに指揮者の解釈への共感が滲んでいたように思う。非常にメリハリのあるパフォーマンスで、ギクシャクした部分はギクシャクしたまんま、ストレートに表現する。第2楽章のテーマ、ヴァイオリンはダウン・ボウ、アップ・ボウのボウイングを強調して、1音1音に明確にアクセントをつけていた部分など印象的かつ極めて効果的。

バーンスタインがマーラーのように振った第3楽章(これはこれで超個性的な名演)は、対極的にクリアな響き。美しいフレーズがリフレインしながら少しずつ高まっていく部分など、まさに天にも昇るかのごとき神々しさと清らかさを湛えている。

第4楽章の行進曲風の主題も押し出しがよく、推進力に溢れた音楽が心地よい。圧倒的なクライマックスを築いて、硬質なティンパニによる堂々たるソロに導かれて圧倒的な終結。納得感こもった「ブラヴォー」の声をきっかけに、会場は大盛り上がりに。これには納得である。退団するチェロ奏者にヘレヴェッヘ自らが花束を渡すなど、心温まる場面も。終演後はサイン会。非常に充実したコンサートだった。

新日本フィルとヘレヴェッヘ、非常に相性がいいと思った。ぜひ今後も共演してほしい。そして、何かしらの肩書きつきの指揮者として招いたりできないだろうか?バッハやハイドンなどの声楽つきなどもやれば、他の在京オケと差別でき、さらに存在感を発揮できると思う。オタクの願望でした。

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