ミシェル・プラッソン指揮 小松亮太(バンドネオン) 新日本フィルハーモニー交響楽団 9/28

久々の新日本フィル。昨年に続いて、フランス音楽の大巨匠ミシェル・プラッソンが登場。シャブリエの狂詩曲『スペイン』、ピアソラのバンドネオン協奏曲、そしてベルリオーズの『幻想交響曲』というお楽しみプログラム。土曜の午後に肩肘張らずに楽しめる演目が並ぶ。プラッソンが前回振ったフランクのシンフォニーは素晴らしかった。

プラッソンは真っ白いジャケットで登場。余裕のあるゆっくりとしたステージ・パフォーマンス。いかにもパリジャンらしい洒脱な雰囲気。そして決していやらしくない。

シャブリエからして軽妙そのもの。なんと、齢85になるプラッソン、音楽が本当に若々しく、新日本フィルをカラフルに鳴らす。

続いてピアソラのバンドネオン協奏曲。ソリストは小松亮太。バンドネオンを生で聴くのは、ひょっとして初めてだろうか。オケはシャブリエからいっきに編成をしぼり、なんと弦と打、そしてピアノのみ。管はいない。ワイヤレスマイクのようなものが大量に運び込まれていたので、ひょっとして録音されていたのだろうか。

バンドネオンはどうやって弾くのかと思ったら、立ったまま、腰掛けず。そして、その音を聴いて、ここまで編成が絞られるわけが分かった。意外と音量が小さいのである。トリフォニーホールの3階席で聴いたが、弱音は耳を澄まして聴く感じ。図体は迫力のある楽器だが、音は結構繊細。

ピアソラ自身がバンドネオン奏者だけあり、この協奏曲は終始バンドネオンが弾きっぱなし。音楽は非常に味わいがあって、ピアソラのほかの楽曲同様タンゴの語法がふんだんに取り入れられたもの。空気を吸い込ませながら全身で弾くバンドネオンの演奏、なかなか体力がいりそう。日本のバンドネオン演奏の第一人者・小松亮太の演奏はピアソラの音楽が身体中にしみわっていて見事だ。プラッソンは、繊細なバンドネオンの音量に配慮しながら丁寧に、きめ細やかにオケを鳴らす。こういう曲にも的確につけるのだから、さすがのヴェテランである。

アンコールに、ふたたび第3楽章を演奏。プラッソンのアイディアだそう。アンコールでは、一段と音楽が引き締まって、ソロ、オケともに鋭角的に、よりシャープになった感じ。プラッソンもオケを大胆に鳴らし、音楽を楽しむ。

休憩を挟んで、幻想。もう何度となくこの曲を振っているであろうプラッソンは暗譜で指揮。第1楽章冒頭のフレーズから、ゆっくりと意味深にオケを鳴らす。主部に入ってからはインテンポで進んでいき、比較的オーソドックスな解釈だが、弛緩は一切なく、緩急のメリハリを見事につける。第2楽章の舞踏会は、肩の力が抜けた洒脱な解釈。これまたインテンポだが、とにかくオケが力まないようにか、プラッソンが「ヒューッ」と息を吹きかけるように吐く音が3階席まで聴こえてくる。

第3楽章では、荒野の遠くからこだましてくる様を表現するためか、オーボエを舞台後方のパイプオルガンの下手側に移動させるなど、細かな演出に気を配る。この楽章、個人的には何度聴いても退屈するのだが、プラッソンは歌声を交えながら美しくオケを鳴らす。

第4楽章から、いっきにギアを入れた。金管を派手に鳴らし、乱舞するかのように叩き打つ打楽器。音楽はますます勢いを増し、第5楽章ではワルプルギスが跳梁跋扈する気持ち悪さが存分に表現される。新日本フィルは胸を空くような全力の演奏で応えてみせ、スリリングな加速をしながら爆発的に終演。会場からは盛大にブラヴォーが飛ぶ。相当な名演だ。アンコールに『カルメン』前奏曲。これまた茶目っ気たっぷりの答礼で客先を沸かせるプラッソン。最後には胸ポケットのハンカチーフを取り出して客席にヒラヒラ振り、コンマスと肩を組んで一緒に退場。ステージパフォーマンスでこれだけ魅せられる指揮者はそういない。素晴らしい余韻のコンサート。

余談だが、個人的にプラッソンには特別な思い入れがある。20年近く前、大阪の旧フェスティバルホールで、プラッソンが振るパリ管のコンサートを聴いて、フランス音楽に目覚めた。自分に、フランス音楽の聴き方を最初に仕込んでくれた指揮者が、プラッソン。この人がトゥールーズの手兵オケと入れたラヴェルは名演揃いだ。あのパリ管との『ラ・ヴァルス』と『高雅にして感傷的なワルツ』の華やいだ響きは、未だに脳裏に鮮明に残る。あのコンサートでもアンコールは『カルメン』前奏曲だった(なんと全部で4曲もアンコールがあった)。きょうのアンコールを聴きながら、当時が懐かしくなって、込み上げてくるものがあった。

終演後、たまらず久々にサインをもらいに行った。舞台ではあんなに矍鑠としているのに、近くで見るとやはり歳相応だという印象。

なお、プラッソンはなんと北京の中国国家交響楽団の首席指揮者をいま務めているそうだ。だから日本に定期的に来てくれるのだろう。ぜひまた客演してほしい。今度はラヴェル・プログラムをぜひ待望したい。

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