大野和士指揮 ホアキン・アチュカロ(p) 東京都交響楽団 9/8

とりたてて思い入れがある曲はないプログラムなのだが、ここのところ絶好調の大野和士&都響のコンサートなのでチケットを入手。フィンランドとの国交樹立100周年記念とのことで、前プロの最初がシベリウスの『トゥオネラの白鳥』、メインは同じくシベリウスの交響曲第2番。その間に、フィンランドとどういう関係があるのかはよく分からないが、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を挟む。ソリストはスペインの名匠ホアキン・アチュカロ。これまたフィンランドとは関係なさそう…。

が、このメインのシベリウスの2番、自分がこれまで実演で聴いてきたシベリウスの2番の中では一番の説得力を感じた。個人的にはサロネンのコンサートよりもこの曲の魅力に迫れた感じ。あくまで好みなのだろうが。

とにかく、都響の鳴りっぷりがすごくて、大編成ながらもその一体感はまさしく「大野の楽器」。別に悪い意味で比較する訳ではないが、やはり昨日聴いたシティフィルよりオケの一体感は上だ。

大野の解釈は、率直な印象では「攻めのシベリウス」。シベリウス特有の、モヤっとしたりボテっとしたりの宙空をつかむような表現とは距離を置き、どこを切ってもある種のクリアなストーリー性が貫徹されていて、曖昧さがない。何となしに音楽が流れている、という瞬間が皆無で、あらゆる旋律やリズムが意味を持って絡み合っている感じ。

第1楽章からかなり先鋭的で、テンポはまさに変幻自在、弦のメリハリのつけ方も大胆なのだが、ここは大野と都響の呼吸がピタリと合う。さらにアグレッシブな第2楽章の表現がとりわけ秀逸。第2楽章中盤以降の情熱的な畳み掛けは、まさに鬼気迫る大迫力。第3楽章もエネルギーを横溢させて疾走し、なだれ込んだフィナーレがものの見事!鋭く切り込むような「ブンッ」というコントラバスのアクセントなどの細かな味付けが抜群に効いている。そして何よりすごいのが大胆なデュナーミク。朗々とした主題が中盤に高らかに回帰する部分への頂点の築き方、その過程での大胆な金管の咆哮などが、劇的な効果を生んでいる。さすがドラマティックにオペラを振る大野である。一気呵成、あっという間の40分弱である。

前半の『トゥオネラ』は静謐でイングリッシュホルンが美しい。つづくアチュカロのラフマニノフだが、齢87のピアニストだけあり、さすがにテクニックが危なっかしい箇所が散見された。とくに終楽章、一小節近くピアノが弾き飛ばして先行してしまった部分があったように思ったが、よくオケが付けたものだ。

アチュカロのピアノは、ガンガンと轟音を弾きならす類では全くなく、芯はあるものの極めて叙情的な表現。ただ、大野の伴奏はあまりその叙情性を生かしたものではなかったように感じた。両者の呼吸や方向性が本当の意味で合ったのは第3楽章に入ってからではなかっただろうか。テクニックが追いつかず、テンポをやや落として噛みしめるように旋律を弾くアチュカロにオケが合わせ、テンポをグッと落として分厚い伴奏を重ねていく共同作業が素晴らしかった。悠然としたテンポでの堂々たるコーダはほかに聴かれるものではなく、惹きつけられた。最初からこういう風に演奏してほしいと思った。

アチュカロがアンコールに弾いた、スクリャービン の左手のための作品は絶美にして絶品。神業的な演奏だった。

大野は、春に聴いたシベリウスの6番とラフマニノフの交響的舞曲のコンサートも素晴らしかった。こないだの定期は、平日晩にベルクとブルックナーを聴く体力がなかったので行かなかったが、なかなかレパートリーが広い指揮者である。底知れぬ才能を感じる。

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