ケント ・ナガノ指揮 辻井伸行(p) ハンブルク・フィルハーモニー管弦楽団 10/31

前日とうって変わって、マーラーを聴いたという余韻が残ったコンサート。ケント・ナガノ指揮のハンブルク・フィルの来日公演。ハンブルク国立歌劇場のピットに入ってるオケで、オーケストラ・コンサートの際は例のエルプ・フィルハーモニーが本拠地なのだと思う。

さすがに、昨日のスコティッシュ・フィルとは違って、オケの音、オケの語法が明確にある。冒頭のベートーヴェンの『エグモント』序曲からして重みのあるバスが心地よく、弦の鳴りも見事。次いでは辻井伸行をソロに迎えてのリストのピアノ協奏曲第1番だが、辻井伸行のソロが見事。何よりタッチが粒立ち、極めて美しい。実演で聴いてきたピアニストの中でも、音色の美しさではトップクラスだと思う。技巧も安定し、オケとの呼吸もよく合う。アンコールはラ・カンパネラで、これまた見事。

後半は昨日に引き続いてのマーラーの交響曲第5番だが、これが超個性的なマーラーだった。ケント・ナガノの新境地だろうか?正直、この指揮者の音楽のカラーはよくは分からないが、どちらかというと『ローエングリン』でのスタイリッシュな棒捌きなどが印象に残っていた。が、きょうのマーラーは相当粘着質。まず、物理的にテンポが遅い。この曲は、普通65〜70分の演奏が多いと思うが、きょうは80分。全楽章、満遍なく遅い。

様相が異なってきたのが第2楽章中盤、チェロからヴィオラへと弱音の音楽が受け継がれていく部分で、異様にテンポを落として意味深に音楽を揺らし、この辺りからスイッチが入ったから、どんどん解釈の振幅が大きくなる。テンポを落とす部分は「これでもか」と落とし、ルバートを強調し、最弱音を繰り出したかと思えば、セカンド・ヴァイオリンを煽って斬り込ませと、まさに音楽が明滅する。テンポが遅い部分はまるで沈潜しているかのように遅い。緊張と弛緩が表裏一体となった、ギリギリの解釈。一歩間違えれば間違いなくダレるし、さすがにこのテンポは自分もところどころついていけず。しかし、ナガノは確信に満ちた指揮をする。

アダージェットも止まりそうな足取りで進み、諧謔的な5楽章も決して軽くならず、細部がデフォルメされる。最後は鮮やかに加速して終結。満席のホールからはそれなりにプラヴォーも飛ぶ。トランペット、ホルンはいずれもかなりの技量。オケ全体としても、先日のベルリン・ドイツ響よりは柔軟性が乏しい印象ではあったものの、十分満足。

なんと、アンコールがあった。リゲティの舞曲?のようだった。面白い曲。終演は9時40分ごろになった。

なかなか好き嫌い分かれる演奏だと思うが、マーラーはこれくらいやってくれると満腹感がある。

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