山田和樹指揮 ネマニャ・ラドゥロヴィチ(Vn) 読売日本交響楽団

ヤマカズこと山田和樹の実演を初めて聴く。これまで不思議と機会がなかった。いまの日本人の若手指揮者の中では知名度・実力ともに筆頭格なのだろうとは思ってきた。そしてきょうの実演を聴いて、力まない指揮に好感を抱き、同時に、とてもセンスがいい指揮者だと思った。ただ…。

冒頭は、マーラーの『花の章』。若いマーラーの青春の息吹を感じさせる素晴らしい音楽で、トランペットの開放的な旋律は、ヴェルディの『ナブッコ』序曲を思わせる。ヤマカズはサラリと風が吹き抜けるように、センスよくまとめる。

続いて、ネマニャ・ラドゥロヴィチをソロに迎えてのハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲。初めて聴く曲。ラドゥロヴィチの実演も初めて聴くと思う。セルビアの人で、ロック・スターのような出で立ち。熱狂的なファンがいるとも聴く。

ステージ・パフォーマンスは、アクション含めて非常に派手ではあるが、ヴァイオリンから出る音量はそれほど大きくなく、比較的繊細な印象でもある。ただ、テクニックは確実で、リズム感も抜群。ヤマカズも、変拍子やシンコペーションをうまく振ったのけ、オケをグイグイと導いていく。ただ、長い割には、あんまり面白くない曲だと思ってしまった。何となく、楽曲の構造はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲と似ている。一方で、魅力的なメロディに彩られているわけでもなく、どちらかというとリズムで押していく感じの音楽なので、35分も要さず、20分な25分くらいの曲でコンパクトに聴かせてくれればいいのに、と思った。いまさらこんなこと言っても仕方ないのだが…。

ラドゥロヴィチがアンコールに弾いたバッハのサラバンドは、繊細な弱音とノン・ヴィブラートを生かした迫真の音楽。文句なしに素晴らしい。ハチャトゥリアンの後に、シンプルなバッハを聴かせてくれるのは嬉しい。

そして休憩を挟んでお楽しみ演目、マーラーの『巨人』。

全編通して、推進力もあり、虚飾もなく、素直な音楽づくりが快い。センスがいい演奏ではあった。ただ、個人的には、途中から相当退屈してしまった。

第1楽章、流れがよく、リピートも省略。最後の爆発は鮮やかで、テンポの動かし方が見事。無駄がなく、肩の力が抜け切った指揮のもと、オケは指揮に安心して身を委ねている。以前、不自然なアゴーギクを連発ふるドゥダメルの演奏に閉口したことがあるが、そういう作為は一切なく、とにかく音楽の自然な流れを重視する姿勢は良い。

スケルツォも、何らハッタリもなく、テンポも堂々たるもの。第3楽章も…と、どうも一事が万事同じ調子で、ふと、何ら自分が心動いていないことに気づく。第4楽章も、ドラマ、そしてメロディの鳴らし方の美しさに事欠かないにもかかわらず、全然心に迫ってこない。繰り返すようだが、音楽の流れは自然だし、指揮も純音楽的だし、オケもちゃんと鳴っている。しかし、その「核心」というか、表現したい「何か」が見出せない。

プログラムによると、ヤマカズは、オケとの「ケミストリー」を重視するそうで、ケミストリーが合えば、「言葉」はいらないのだという。たしかに、以前この人がしゃべっているのをテレビで見たが、しゃべり方がぎこちなかったし、言葉を補って余りあるくらい、確信に満ちた、雄弁な指揮をする。ただ、逆に、その指揮に頼りすぎていないだろうか?しなやかな身体性だけで音楽をしているのではないか、という印象を持ってしまった。会場は大盛り上がりだったが…。次の予定もあり、早々と会場を後に。アンコールに、バッハのアリア、マーラー編曲版をやった模様。

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