酔いどれ音楽&読書日記―一人の愛好家の独白

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zoom RSS エサ・ペッカ・サロネン指揮 諏訪内晶子(Vn) フィルハーモニア管弦楽団 5/20

<<   作成日時 : 2017/05/20 21:10   >>

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日曜に引き続いてのサロネン/POであり、やっぱりこの人の才能はすごいと改めて恐れ入った。同時に、オケ、とりわけ金管のうまさに改めて舌を巻いた。ただ、あんなに壮絶な『悲劇的』を聴いてしまったので、やや今日は消化不良感があり、加えて、多少「策士策に溺れる」印象を受けたのも事実。初めて聴く諏訪内さんは恐ろしく音色が美しいが、演奏そのものにはそれほど感動できなかった。

【前半】
・R.シュトラウス:交響詩『ドン・ファン』
・メンデルスゾーン :ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
(独奏:諏訪内晶子)
【後半】
・R.シュトラウス:交響詩『ツァラトゥストラはかく語りき』

きょうは東京芸術劇場の3階席で聴いたが、このホールの音響は、どうも茫洋としていて捉えがたい。音像がクリアにならない。そのもどかしさも感じながらの『ドン・ファン』だが、それでも流麗なフレージングに酔いしれた。このオケは、弦はややドライで無機質に響くが、管、とりわけ金管が本当にうまい。そして、ティンパニの思い切りの良さが胸をすく。

それにしても、サロネンの指揮姿は、それ一つとっても「魅せる」もので、大いにステージ映えして、「鑑賞」の対象になる。大きな身振りはスポーティー極まりないが、同時にしなやかな芸術性が同居していて、身体性と音楽性と機能性と鑑賞性が兼ね備わっていて、巨大な才能に感じ入ってしまうのである。現役の指揮者では最もバトンテクニックに秀でているのではないか。

続くメンデルスゾーンは、正直あまりピンと来なかった。一言で言うと、諏訪内さんとサロネンの音楽的な嗜好に大きな溝を感じ、ややぎこちない感じが漂い続け、手に汗握る瞬間がなかった。

諏訪内さんの音色は美質満点で艶があり、ホール3階まで豊かに響いてきて、流麗そのものである。一方のサロネンの嗜好は、もっと硬質な音楽であり、ティンパニにも古楽器を用い、機能的な音楽づくりを目指す。そのちぐはぐな感じが終始拭えず、とりわけフィナーレなどでは、かなり快速なテンポを仕掛けてきたサロネンに対し、諏訪内さんが遅めの流麗なフレージングで「こっちに合わせて」とばかりに応戦し、かなり座りが悪い感じでズルズルと音楽が連続していった印象だった。諏訪内さんがアンコールで颯爽と弾いたイザイは切れ味鋭い快演。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲は、この半年間でやたらコンサートで聴く機会があり、ベル&ハーディング、レイ・チェン&サラステ、五嶋龍&インバル、ズナイダー&ルイージに続いて5度目。それだけ人気曲だということだろうが、逆に対して新味のない演奏だと、飽きてしまう。上記の演奏でとりわけ印象的だったのはベル&ハーディングで、両者が才能をぶつけ合う丁々発止の好戦的な演奏であり、大いに即興的で、興奮した。五嶋龍&インバルも、両者の個性が融合した「古くて新しい」熱演。せっかくのコンチェルトなのだから、予定調和を排し、個性がぶつかり合う白熱の演奏をどうしても期待したくなる。

後半の『ツァラトゥストラ』では、もはやサロネンはやりたい放題で、目まぐるしいまでにテンポを動かしまくって緩急の対比を強調し、トゥッティは轟然と鳴らし、弱音は慈しむように鳴らし、加速は大胆に、速いところは恐ろしく速く、遅いところは恐ろしく遅く、バトンテクニックの限りを尽くして目一杯の表現を志す。新奇な表現があまりにも多かったため、細部の物珍しさにとらわれてしまい、「一筆書き」でサッとしたためるような首尾の一貫性があまり感じられなかったのも事実。それが、「策士策に溺れる」という感想につながる。それでも、サロネンとPOというコンビの蜜月ぶり、つまり、サロネンのしなやかなキューに120%呼応するフィルハーモニア管との相性の良さを存分に感じた。何より慄然とさせられたのは『病より癒えゆく者』のゲネラル・パウぜの前の総奏で、信じられないほどの長大な音価で文字通りオケを「鳴らしきり」、「私のオケの鳴りの良さを聴け!」とばかりに大見得を切り、衝撃的だった。

この曲も2ヶ月前にウルバンスキの個性的な名演を堪能したところだったので、それぞれの音楽づくりの相違が面白い。痛感したのは、あまりモティーフや主題の一貫性が感じられないため、音楽の軸をどう維持するか、何を聴かせるかがきわめて難しい音楽だということ。これは、『ドン・ファン』筆頭に、リヒャルト・シュトラウスの交響詩一般に言えることかもしれないし(その意味で見事なのは尾高忠明の『英雄の生涯』)、マーラーの交響曲第1番などにも強く感じる特徴である。ウルバンスキは、静謐で哲学的な雰囲気をまとった新境地を披露し、きょうのサロネンはオケとの信頼に裏打ちされた恐ろしく機能的な演奏だった。

そしてアンコールは、奇しくもそのウルバンスキのコンサートのアンコールと同じく、ワーグナーの『ローエングリン』第3幕への前奏曲。これまた快速で疾走する爽快な演奏。トロンボーンがめちゃめちゃ上手い!

サロネンには一般参賀あり。指揮棒をしなやかに揺らしながら答礼するサロネン、なんとなくクリアで清潔感が漂い、無駄なものをそぎ落としながら生きているような印象を受ける。iPadのCMに起用されたワケがなんとなく分かる。

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